Blog セミナー開催レポート|在タイ日系企業における「不正」の事例と防止法

2019年09月23日 (月)

講座・セミナー開催記録
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2019年7月23日、日経ビジネススクール(NBS)アジア2019実務講座『在タイ日系企業における「不正」の事例と防止法』が開催されました。タイへ進出した企業にとって、汚職や横領、キックバックなどの不正リスクへの防止対応は、重要な課題の一つとなっています。今回の講座では、汚職と横領を中心に不正防止に向けた管理体制の方向性ついて、KPMG Phoomchai Business Advisory Ltd.の坂東亮氏より解説いただきました。

実際の講座の様子は動画でもご覧になれます。

「不正をすれば見つかってしまう」という心理的プレッシャーを与えることが必要

贈収賄は、タイにおいて大きなリスクとして一般的に認識されています。タイ国内での法整備は進んでいるものの、現状、贈収賄が発覚した場合には、タイ国内法よりもアメリカやイギリスなどの外国法のほうがいち早く適用されてきたケースが多くみられていました。

しかし、タイ国内でも「適切な内部統制措置」に関するガイドライン(8つの原則)が発表され、法人に対して少なくともこの「8つの原則」を含む内部統制措置を定めることを求めています。贈賄が法人のために行われた際、その法人が「適切な内部統制措置を」備えていなければ、法人に対しても刑事責任が科されることとなりました。また、民間レベルでは、「Collective Action Coalition against Corruption(CAC、反汚職集団的行動連合)」へ加盟する企業が増えています。この団体は、民間企業における不正リスクへの認識促進と汚職防止のための仕組みの導入を目的として設立され、適切な汚職防止プログラムを導入している企業の認定活動も行っています。汚職が発生した場合の法人の免責の可能性をにらみ、加盟する企業が増えているようです。

一方、最も身近で頻度の高い不正行為は横領です。その多くは単純な手口で、基本的な内部統制や管理体制を備えていれば防げた事案が多くなっています。不正行為は、「機会」「動機」「正当化」の3要素がそろった場合に発生すると言われ、その一つでも抑えることができれば不正に繋がりません。この3要素のうち、会社がコントロールできるのは「機会」であり、内部統制を適切に構築、運用し、「不正をすれば見つかってしまう」という心理的プレッシャーを与えることが必要でしょう。

内部統制を適切に運用することで、多くのリスクを回避できる

内部統制の構築、運用には一般的に「不正リスク評価」「内部統制の整備」「モニタリング」の3つのステップがあると考えられます。

1. 不正リスク評価
会社全体の業務の中でどこに不正のリスクがあるか、不正の発生可能性と発生した場合の重要度を評価します。特に不正リスクが高い領域は、現金やその他の資産の社内への流入、社外への流出に関係する業務プロセスです。また、不正が発生した後の隠ぺいを防ぐ仕組みを整えることも重要です。IT管理を活用し、文書や情報の改竄(かいざん)を防ぐことは有効な手段です。

2. 内部統制の整備
内部統制を構築するにあたり様々な管理手続きを導入する事になりますが、重要な統制の例として業務分掌があります。承認、現物管理、記帳の3つの手続きの担当者を分け、牽制機能を効かせることが内部統制の基本となります。実際に、この3つの業務プロセスの担当者を分けないまま、不正が発生した事例が多くあります。

3. モニタリング
「内部監査」によって既存の内部統制が有効に機能しているかを確認するとともに、不正に関する情報収集や不正の兆候把握に努めます。不正が起こる際には、必ずと言ってよいほど兆候があると言われています。違和感への感度を上げるなど、その兆候を把握することによって不正を発見し、場合によっては不正を防ぐことも可能です。また、不正は内部通報や内部告発によって発覚する場合が最も多く、匿名性を担保した内部通報制度を整えておくことが不正の早期発見のポイントになります。

不正は至る所に存在し、場所を問わずに発生します。不正の脅威を免れる組織など存在しないと言われていますが、内部統制を適切に構築し、運用することで、多くのリスクを回避できることも、また事実です。現地法人だけでは十分な人員を割けない場合は、本社も関与した不正防止の取り組みによって、不正の芽を摘むことができるでしょう。

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執筆 mirai campus

mirai campus の運営事務局。

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