在タイ日系企業の事業運営にちょっとしたヒントをお届けする新コーナー「miraiの知恵袋」。今回は、2017年に日経ビジネススクール(NBS)アジア主催で行われた海外視察型研修NBSビジネスミッションより、新興財閥と呼ばれるタイの経済発展を支えた大手3社のCP Group(1921年創業)、Central Group(1947年創業)、TCC Group(1960年創業)を紹介します。
Central Group 目次
1. タイ国内は50県で事業を展開。世界では15カ国でビジネスを展開
2. ファミリーのフィロソフィーは「自分たちの力を知ること」と「無理をしないこと」
タイ国内は50県で事業を展開。世界では15カ国でビジネスを展開
Central グループは、タイでモダントレード(近代的流通 ※略称MTと呼び、百貨店やスーパー、コンビニ等を指す)を牽引し、小売業で最大の財閥ファミリー企業です。
タイ国内では77県中50県に事業を展開し、世界15カ国でビジネスを展開しています。グループ内の売上シェアは海外が約30%で2012年の5%から大きく増加しました。顧客ターゲットは、タイへ来る観光客や在タイ外国人などのハイエンド層から中流層で、徐々に農村部等の低所得者層にも拡大を狙っています。コンビニではファミリーマートを運営していますが、最大店舗数のセブンイレブンとは真正面で争わず、観光地に重点を置いた出店戦略で数を伸ばしています。事業は小売業のみならず、外食、ホテルなどにも及び、主な戦略は買収と提携によるチェーン展開。食品に関しては、川上の農家にまで農業技術の指導を行うなど品質向上と管理を徹底しています。
タイの小売業として大きな力を持つCentral グループですが、近年急激に勢いを増し始めたEC産業を彼らはどう受け止めているのでしょうか?結論から言うと、ECが浸透するのは次の世代というのが彼らの見解です。しかし、そのECの波に遅れを取らぬよう自社ECサイトの運営にも力を入れており、店舗に出入りする膨大な顧客情報をBIGデータにまとめて活用するなど、一番早く「小売+EC」の体制を整えた者が市場を勝ち取るという見方を示しています。
ファミリーのフィロソフィーは「自分たちの力を知ること」と「無理をしないこと」
ファミリーの一人であるSupparat氏からは、Centralグループの堅実さを伺うことができました。組織上、グループの取締役会の上に株主であり最高意思決定機関となるファミリーカウンシルが存在しており、グループの運営や活動について常に議論を交わしています。ファミリーのフィロソフィーは「自分たちの力を知ること」と「無理をしないこと」。買収企業の経営は元の経営者に任せる方針を取っており、海外の専門家も積極的にグループ内企業のトップに据えています。同氏自身も自分の上司として外部の専門家を雇っており、必ずしもファミリーの人間がトップに立つわけではないと強調します。200人を超えるファミリーの中でも、Centralグループの事業に携わる人間は3〜40人程度と厳選しています。彼はCentralグループを「Most international local company」と紹介しており、ローカルなタイ市場を中心としつつも外部から優秀な人材を積極的に登用し、同族ファミリー企業が陥りがちな問題点を乗り越え、世界に立ち向かおうとしています。
最高の人材で組織を最適化し、増加するASEAN、メコン地域の中間層に向けて、より豊かな生活を提供するーー日本企業が期待する消費市場の最前線で活躍する彼らの強さの秘密が垣間見えました。
Special Movie|タイ・メコン地域のビジネス最前線を学ぶ4日間
日経ビジネススクール(NBS)アジアでは海外視察型研修「NBSビジネスミッション」を開催しております。NBSビジネスミッションのコンセプトは、「現場に行って、現物を見て、現実を知る」の三現主義。2017年は、大手財閥企業、食、マーケティング、医療・ヘルスケアの4つのテーマで開催し、タイ企業25社を訪問しました。下記の動画は、2017年9月に開催された「タイ・メコン地域のビジネス最前線を学ぶ 4日間」の様子をまとめたものです。