Blog セミナー開催レポート|現地化に向けて整えるべき人材育成の仕組みと体制

2019年08月02日 (金)

講座・セミナー開催記録
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2019年7月19日、日経ビジネススクール(NBS)アジア2019実務講座「現地化に向けて整えるべき人材育成の仕組みと体制」が開催されました。幹部社員の現地化を目指す日系企業は年々増えていますが、一方で「任せきれない」「育ててもすぐに辞めてしまう」といった声も多く、現地化があまり進んでいない実態が見受けられます。そこで今回は、タイの文化やタイ人の気質を踏まえて、タイ人部下を育成する側の日本人が持つべきマインドと人材育成の基盤づくりについて、Mercer (Thailand) Ltd.の仲島基樹氏より解説いただきました。4時間にわたる講義の中から、一部エッセンスを抜粋してご紹介します。

実際の講座の様子は動画でもご覧になれます。

人材育成は誰がやるべきなのか?

まずはじめに、なぜ、会社が人材育成をする必要があるのでしょうか。

この問いに対して、多くの日本人は、人材は経営資源であるから会社が人材育成をする必要があると答えるのではないでしょうか。しかし、世界に目を向けると、必ずしもそれは当たり前の認識ではないと仲島氏は言います。個人のキャリアのオーナーは本人自身であるから、個人が自分の成長に責任を持つべきであって、会社が面倒を見る必要はないと感じる人も少なくないのです。

また、タイ人について言えば、環境や文化的な背景から、必ずしも人材育成や個人のスキルアップに積極的に取り組むとは限りません。そのため、タイ人部下が自発的に「やりたい」と感じ、負荷なく進められるような育成プロセスや学習プロセスを構築する必要があります。

人材育成に重要な「教える側」のスキル

日本人も自らの成長の過去を振り返り、教える側としてのスキルを上げていく必要があります。

まず、育成対象者であるタイ人を「クライアント」と捉えて向き合うことが大切です。「クライアント」とは、個別のニーズに基づいて専門的なサービスを受ける依頼人のことです。すなわち、サービス提供者である教える側にも、相応のスキルが要求されます。

次に、育成対象者の意欲を引き出すことが大切です。十分に意欲を引き出すためには、次の3つの段階を踏む必要があります。まずは仕事の意義を理解させ、プロセスやサポート体制を示すことで実現可能だと理解させます。そして、「報われそうだ」と報酬への期待を感じさせることで、初めて部下は「よし、やろう」と思うことができるのです。ここで言う「報酬」とは金銭面に限ったことではなく、「キャリア形成」も一つの報酬にあたります。育成対象者がどのようなキャリアを求めているのか、どのような価値観(キャリアアンカー)を持っているのかを把握し、それらに合わせた動機づけや声掛けをすることで意欲を引き出します。

意欲を引き出すと同時に、教える側には次の3つの要件が求められます。一つ目は、必要なアウトプットとプロセスの全体像を描くこと。課題に対してのアウトプットのイメージを明確にし、プロセスを具体化します。二つ目は、相手に応じて介入スタイルを変えること。対話を通して、育成対象者の意欲やスキル、アウトプットや進め方をイメージできているかを確認し、そのレベルに合わせた介入スタイルを決定します。三つ目は、リスクをとって育成機会を与えること。権限移譲の領域を定め、適切にフォローをしながら、育成の機会を創出していくのです。

OJTで見落とされがちな「教える」プロセス

このような人材育成活動を円滑に進めるためには、統合的な人材育成の基盤構築が必須となります。「人材戦略」「人材評価」「人材開発」「後継者管理」の4つのサイクルを効果的に回して人材育成を進めます。特に、「人材開発」において重要視されるOJTについては、見落とされがちなプロセスがあると仲島氏は言います。それは「教える」プロセスです。日本人は、「まずはやってみて、わからないことがあれば聞きなさい」という文化の中で育ってきました。しかしタイ人部下は、上司がすでに答えを持っているなら最初に教えてほしいと思うのです。「教える」「やってみせる」「やらせてみせる」「フィードバックする」。この4つの基本プロセスに則り、育成対象者のスキルアップを図ることで、効果的なOJTを行うことができるのです。

人材育成は、会社のビジョンやゴールを達成するための人事戦略の一つであり、会社にとっての重要課題です。しかし、異文化において、「日本流」の人材育成では壁にぶつかることも多くあり、そんな時私たちは、その異なる文化圏の人々に対して効果的な「魔法の杖」とも呼べる人材育成方法があるのではないかと探してしまいます。

しかし、そうではありません。日本人もタイ人も、その他の国の人であっても、同じ人間であり、多くの共通点を持っていることも事実なのです。違いを理解しながらも、同じ人間として共通する部分にも目を向け、育成する側となる日本人のスキルを向上させ、人材育成の基盤をつくることで、タイ人部下の育成と現地化が促進されることでしょう。

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執筆 mirai campus

mirai campus の運営事務局。

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